個人差はあるものの、女性が「以前より髪の毛が細くなってきたのでは?」と気づき始めるのは、40代頃からです。同時に髪のコシやツヤもなくなってきたように感じ、全体的にボリュームがダウンして、“ペタンコ髪“が気になる、スタイリングが決まらないといった悩みも見られるようになります。
こうした髪のエイジングの原因の1つとして挙げられるのが、加齢に伴うホルモンバランスの変化です。体内では様々なホルモンが分泌されていますが、その中でも特に女性の髪の健康との関わりが深いものに、「エストロゲン」、「プロゲステロン」の2つの女性ホルモンと、「成長ホルモン」があります。
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エストロゲンがコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進したり、血流をよくしたりすることで、頭皮の弾力性や潤いを保ち、髪のツヤやハリを高める働きがあります。
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プロゲステロンは体温を上げる、食欲を増進させるなど、妊娠期の女性の体を維持するように働くホルモン。太くて長い髪が育つように成長を支える働きがあります。
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成長ホルモンは、皮膚や臓器を若々しくよい状態に保つために欠かせないホルモン。髪を太く長く育て、頭皮環境の改善にも貢献する。
これらのホルモンは、20歳頃をピークに、年齢と共に徐々に減少していきます。
※イメージ図
そのためプロゲステロンの分泌量が減り始める30代後半から40歳前後からは、髪が細くなる、髪が抜けやすくなるといった症状が出やすくなります。
また、エストロゲンの分泌量も30代後半から徐々に減り始め、40代半ばを過ぎると急速に減少し、髪もハリやコシ、ツヤを失います。
こうした加齢による髪のエイジングは、程度の差はあっても、だれにでも起こるものです。
40代頃から髪が細くなるメカニズムを、もう少し掘り下げてみましょう。そのためには、「ヘアサイクル」についての理解が欠かせません。
肌は生まれてから剥がれ落ちること(ターンオーバー)を繰り返していますが、皮膚の一部である髪も、一定の周期で生まれては抜け落ちることを繰り返しています。これをヘアサイクル(毛周期)と呼んでいます。
ヘアサイクルには、「成長期」、「退行期」、「休止期」の3段階があり、通常2年から6年で新しい毛髪に生え変わります。
成長期は髪が伸びる時期で、頭皮の下の毛包(もうほう)と呼ばれる部分が盛んに細胞分裂を繰り返し、髪は太く長く成長していきます。退行期には細胞分裂が止まって毛包が小さくなり、休止期には毛包が退化し、脱毛の準備が進みます。
※イメージ図
ところが、年齢を重ねて各種ホルモンの分泌が減ってくると、このヘアサイクルに乱れが生じます。
髪の成長期を維持するプロゲステロンが減ることで成長期が短くなり、髪は太い毛に成長しないまま、退行期、休止期に移行し、やがて抜け落ちてしまいます。成長期が短縮するのに反比例して休止期が長くなり、休止期毛の割合が増えるため、細い髪が増えるようになります。また、髪のハリやツヤを高めて髪を豊かにするエストロゲンが減ることで、頭皮が渇いて薄くなり髪の質感も変わってボリュームもダウンします。
こうして髪そのものが細くなり、さらに本数も減るため全体的に髪が薄くなり、地肌が見えやすくなってきます。いわゆる「薄毛」と呼ばれる状態ですが、女性の薄毛は頭部の広い範囲にわたって全体的に起こるのが特徴です。また、急に細くなったり抜けたりするということはなく、何年もかけてゆっくりと進行していきます。
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全体的なボリュームダウンに加えて、頭頂部や前髪の生え際の頭皮の見えやすさが気になる場合は、「壮年性脱毛症」の可能性があります。頭頂部の髪の薄さが目立つ、生え際が後退して額が広くなったように見えるなど、髪が細く薄くなるのが特徴です。 女性の体内でも男性ホルモンが少量作られていますが、女性ホルモンの低下によって男性ホルモンが相対的に多くなるのと、ストレスによる男性ホルモンの増加が、女性の壮年性脱毛の原因のひとつと考えられています。
壮年性脱毛症は、髪をつくる毛包の働きが阻害され、ヘアサイクルにおける成長期が短くなることで起こります。髪が十分に成長しないまま退行期、休止期に移行してしまうため、短い髪や産毛のような細く弱々しい髪が増え(軟毛化)、抜け毛も増えてきます。また毛包も徐々に委縮して、太く健康な髪が育ちにくくなり、髪の本数も少なくなって、地肌が透けて見えるようになります。
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女性の壮年性脱毛症は、早い人では30代から始まりますが、多くは更年期以降です。ただし、この時期は加齢による薄毛も起こるため、どこまでが壮年性脱毛症によるものか、区別がつきにくいこともあります。皮膚科で治療する場合は、加齢によるものと壮年性脱毛症によるものとを特に区別することなく、外用薬(発毛剤)や内服薬が用いられます。
また、市販薬としては、発毛剤も販売されています。
髪の健康には、食事・睡眠・運動・ストレスなど毎日の生活習慣が大きくかかわっています。その中でも、太い髪を育てるために特に女性が見直したいのが「食事」です。加齢によるホルモンバランスの変化は髪が細くなる原因の1つですが、実際は体の栄養状態が髪のエイジングを左右していることが多いためです。
東洋医学では髪は「血余(けつよ)」といわれ、血の余りでできているとされます。食事で摂った栄養は生命維持に重要な臓器や血管に優先的に配分され、髪は命にかかわる部分でもないので、後回しになるというわけです。そのため栄養が不足していると、真っ先にダメージを受けるのが、髪。女性に多い「かくれ貧血」などが、髪を細くしてしまう原因になることもあります。
栄養はバランスよく摂ることが基本ですが、髪の健康のために特にしっかり摂りたい栄養素は、「タンパク質」「ビタミンB群」「鉄」「亜鉛」の4つ。ご飯やパン、麺類などの摂り過ぎによる糖質過多の食事、加工食品の多用など、偏った食生活では不足しがちになるので注意が必要です。
また、細胞膜を強くし、女性ホルモンの材料となる脂質は控え過ぎないこと。良質な油を選んで、適量を摂るようにしましょう。サバやサンマなどの青魚の脂には血流をよくするDHAやEPAが豊富に含まれ、髪の健康にも有効です。
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タンパク質は、髪の主成分であるケラチンの材料となります。タンパク質量として1日50g以上(食材に換算して約250g)を目安に、肉だけに偏らず幅広い食品から摂るようにしましょう。
多く含む食品……肉類、魚介類、卵、乳製品、豆類、大豆食品など
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ビタミンB群は代謝を高め、細胞を活性化すると言われています。
多く含む食品……豚肉、鶏肉、レバー、マグロ、ウナギ、玄米、小麦全粒粉、納豆、ブロッコリーなど
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鉄は血液の中で酸素を運搬するヘモグロビンの成分となり、頭皮や髪の健康維持には大切です。
多く含む食品……レバー、赤身の肉、カツオ、イワシ、アサリ、ひじき、大豆、小松菜など
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亜鉛はタンパク質を体内で効率よく利用するために必須の栄養素で、細胞の生まれ変わりを促します。
多く含む食品……牡蠣、エビ、カニ、貝類、卵、イワシ、牛赤身肉、カシューナッツなど
食事が体の内側からのケアなら、外側からのケアも大切です。健康な髪を育むためのポイントは、髪が育つ頭皮環境を整えること。毎日のシャンプーを見直すと共に、頭皮マッサージを習慣にしましょう。積極的な頭皮ケアをプラスすることで、髪のエイジングにも差がつきます。
丁寧なシャンプーで頭皮の汚れや余分な皮脂をしっかり落とし、清潔に保つことが大切です。ただし、頭皮の潤いを保っている皮脂まで落とし過ぎないように、適度に残すようにしましょう。
そのためには、熱過ぎない37℃から40℃くらいのぬるめの湯で洗うこと。髪だけでなく、頭皮まで湯でしっかり湿らせてから、シャンプー剤を手のひらで軽く泡立てて髪になじませ、指の腹を頭皮に密着させて優しくマッサージするように洗います。洗い終わったら、すすぎ残しのないようにシャンプーをきちんと洗い流し、コンディショナーやトリートメントを使う場合は、髪のみになじませるようにします。
頻度としては1日1回、夜に洗って頭皮の汚れや皮脂を落としてから寝るのが理想ですが、ライフスタイルによってはこれにこだわる必要はありません。頭皮が乾燥しやすい人は1日置きにしたり、2回に1回はシャンプー剤をつけずに湯だけで洗う“湯シャン”にしたりする、逆に頭皮がべたつきがちな人は1日2回にするなど、自分に合った頻度と方法で行うことが大切です。
シャンプーも、エイジングに添って見直してみましょう。アミノ酸系シャンプーと呼ばれるもの(成分例:ココイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルアラニンNaなど)は、洗浄性と肌へのやさしさのバランスがとれているものが多いため、髪や頭皮を健やかに保ちたい人には選択肢の1つになります。また、フケやかゆみがある時には、ピロクトンオラミンやグリチルリチン酸ジカリウム等が配合されたシャンプーを使うのも良いでしょう。
いずれにしても、どのシャンプーが合うかは人それぞれです。まずは使ってみて自分の髪や頭皮に合うかどうか確かめるのが一番です。
頭皮の血流を促し、髪をつくる毛包に新鮮な酸素や栄養を送り届けるためには、頭皮マッサージがお勧めです。1日のどの時間に行ってもよいのですが、シャンプーのついでに行えば、習慣化しやすいでしょう。大きな血管が走っている耳の前あたりと後頭部を中心に、血行が悪くなりやすい頭頂部に向かってマッサージするのがポイントです。
手のひらを使い、こめかみから頭頂部に向かって、グルグルと円を描くようにやさしく押しほぐしていく。
指の腹を使い、耳の後ろあたりから後頭部全体を下から上(頭頂部)に向かってもみほぐす。
加齢で髪が細くなるのはだれにでも起こる自然な現象ですが、食事を見直したり、シャンプーの方法を変えたりすることで、髪の状態を改善し、エイジングを緩やかにできる可能性があります。年齢だから仕方がないとあきらめるのではなく、体の内側と外側から積極的なケアを行っていきましょう。
提供元:リアップ ブランドサイト