RiUP開発秘話

 大正製薬は、発毛剤「リアップ」を1999年に発売しました。その後も様々なニーズに対応したシリーズ品を発売し、2017年7月にシリーズでの累計販売本数が6千万本を突破(※1)しました。
リアップは、元々アメリカで医師の処方せんで使用できる医薬品として研究開発されていた発毛成分を、日本では市販薬の発毛剤として開発しましたが、導入契約締結から発売するまでになんと14年もかかりました。
 なぜ、こんなに長い時間がかかったのでしょうか?ここでは、リアップが発売に至った開発の歴史について振り返ります。

第1話

ライバルを振り切り、契約を勝ち
取った常識破りの方法とは!?

「自分の髪が生える」
発毛効果が認められている唯一の成分、
○○○○○○

 発毛剤であるリアップは、パッケージに「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」という効能・効果が記載されています。壮年性脱毛症とは、20代から幅広い世代に起こる遺伝性の薄毛や抜け毛のこと。リアップは、この壮年性脱毛症に対して明らかに「発毛」という効能・効果を記載できることが大きな特徴です。そして、この発毛効果が認められている唯一の有効成分が「ミノキシジル」なのです。

ライバルを振り切り、
契約を勝ち取った常識破りの方法とは!?

 1985年、アメリカのアップジョン社(現 Johnson & Johnson 社)は、医師の処方せんで使用できる医薬品いわゆる「医療用医薬品」として、ミノキシジルの研究開発中でした。アメリカでの臨床試験において高い有効性が確認され、1988年にミノキシジル外用剤が医薬品として認可されました。アメリカでの発売に続いて約70もの国々で発売されていきました。

 日本でも多くの製薬メーカーがアップジョン社からミノキシジルの導入に意欲を示し、同社にその導入を打診していました。大正製薬もそのひとつでしたが、他社とは異なる提案を行いました。日本で使用されていない医薬品は、まず医療用医薬品として発売することが一般的な方法です。その後、有効性や安全性が確認され、市販薬としての販売が認められる場合があります。しかし、大正製薬はこの医療用医薬品としてのステップを経ずに、直接市販薬として販売するように開発・製品化の構想を打ち立てたのです。
 「えええええっ!? そんな方法あるの!?」と耳を疑いたくなりますが、当時からすでにこのような申請の方法は存在しており「ダイレクトOTC医薬品」(※2)と言います。(OTC医薬品は、市販薬のことです。)ただし、当時この方法を利用して承認された前例は、ただの1例も存在しませんでした。それは、安全性の確認が極めて難しいからです。

 医療用医薬品としての開発・製品化を選択すべきか、それともダイレクトOTC医薬品として開発・製品化を選択すべきか。大正製薬にとって思案のしどころでしたが、ダイレクトOTC医薬品に決断したのは、当時次のような背景を考慮したためです。

・日本の毛髪用剤は、薬局・ドラッグストア中心に販売されている

・薄毛を病気と考えて、お医者さんに行く習慣がない

 日本の毛髪用剤の市場環境を考えれば、直接市販薬として販売することがより多くのお客様の悩みを解決できるはず。契約の締結に熱意を示した結果、1985年、国内数十社に及ぶ競合メーカーを振り切りミノキシジルの導入契約を結ぶことに成功しました。

第2話

1日2回塗って本当に
髪が生えるのか?

前人未到のダイレクトOTC
立ちはだかる壁の高さに立ち尽くす……

 契約成立は、大正製薬にとって大変ありがたく喜ばしいことでした。しかし、ここからが新たな試練の幕開けとなります。ミノキシジルは、もともとアップジョン社が発売した高血圧を治療する飲み薬の副作用から誕生したものです。この薬を飲んだ人の身体に、毛が多く生えてくる副作用が起こったことからアップジョン社が研究を進め、ミノキシジルの発毛効果を解明して発毛剤を開発したのです。

 このような経緯があったため、血圧に関連する様々な副作用が心配されました。その上で、まだどこのメーカーも実施したことがないダイレクトOTC医薬品として発売する道を選んだため、医療用医薬品と同等レベル以上の有効性と安全性、そして品質を証明しなければなりませんでした。
 発毛剤という新たなジャンルをつくりたい大正製薬にとって、これらの問題は大きな2つの壁となって立ちはだかったのです。

1日2回塗って本当に髪が生えるのか
医師による臨床試験での確認

 まず1つ目の壁は、安全性と有効性の確認です。海外で開発された「ミノキシジル配合の発毛剤」が、実際に日本人が使用して問題がないことを科学的に示さなければなりません。当時はアップジョン社がアメリカでテストを行って得られたデータで申請すれば、国から承認を得られると考えていました。

 しかし、求められたものは日本人による臨床試験データだったのです。市販のかぜ薬でも臨床試験が行われることがありますが、かぜの症状は一般的に1~2週間ですので、1人の患者さんのデータは数週間で収集できます。ところがミノキシジルが1%溶けた発毛剤は、1日2回6ヵ月使用して効果が現れるため、1人の患者さんのデータ収集に少なくとも半年間必要となります。
 そこで医師の協力のもと、長年にわたる膨大な時間を掛けて全国40施設約500名の患者さんに実施し、ようやく販売の承認を得るための申請にこぎつけることができました。

第3話

「正確に、かつ簡単に1mL計れる
容器なんて、できるわけない…」

 2つ目の壁は、誤用を避けるための安全な容器の開発です。ミノキシジルの特徴を考慮すればより安全で効果的に、そして適正に使用していただくための容器の開発は、製薬メーカーとして譲れません。さらに子供が間違って飲まないよう誤飲防止機能も求められました。
 臨床試験により安全性と有効性を確認することができましたが、それは皮膚科の専門医の管理下で実施したものです。実際に薬局等で販売されるものは、使用する人が1回に決められた使用量の1mLを計って塗ることになります。このとき、1mLより多くても少なくてもいけません。正確に1mLを計れなければならないのです。

 そして1日2回毎日塗るものですので、忙しくて時間のない朝や疲れて帰ってきた夜でも簡単に計れる容器が求められました。
 正確でかつ簡単に計れる容器の開発……。あまりにも高い要求に、担当者にとっては頭の痛くなる話でした。作っては失敗し、また作っては失敗を繰り返す。「そんな容器、作れるはずがないじゃないか!」担当者が悲鳴を上げる日々が過ぎ去ること数年、試行錯誤の結果、ついにこの条件を満たした容器を開発することができました。

 このように、臨床試験における有効性と安全性の確認と、誤用を避けるための安全な容器の開発という大きな2つの壁を乗り越えて1999年、ようやく日本での発毛剤第1号となる「リアップ」を発売することができました。1985年にアップジョン社と契約を結んでから、なんと14年後のことです。
 14年間、とても長い年月でした。研究開発にたずさわったスタッフの中には、定年をむかえ志半ばにして会社を去ったものもいました。また、契約を勝ち取った年に子供が生まれ、リアップが発売になったときにはその子が中学2年生になり、反抗期で頭をかかえていると笑って話す開発スタッフもいました。

第4話

追求したら
ミノキシジル5%+発毛サポート成分

 リアップの誕生は毛髪用剤市場において強烈なインパクトを与え、元々約280億円(※3)だった市場は約600億円と2倍以上に拡大。リアップ発売後も、発毛効果と「かぶれ」や「かゆみ」などの副作用対策とお客様のニーズを考えて研究開発を重ね、シリーズ品を発売してきました。
 薄毛の男性は、頭皮のアブラが多い傾向にありますが、このアブラ、リアップを使用する人にとってダメージになります。抜け毛の原因になりますし、リアップを塗ってもミノキシジルの浸透が妨げられる恐れがあるのです。

 そこで、ミノキシジルの濃度を1%から5%に引き上げた「リアップX5プラス」(※4)は
頭皮のアブラに着目して頭皮環境を整える3つの発毛サポート成分をプラスしました。

・ミノキシジル
毛母細胞にある毛乳頭という毛髪を作る司令塔に作用し細胞分裂を活発にする

・ピリドキシン塩酸塩
ミノキシジルの浸透を妨げる過剰な頭皮のアブラの分泌を抑える

・トコフェロール酢酸エステル
炎症やかゆみの原因となる頭皮のアブラの変質を抑える

・l-メントール
炎症・かゆみを抑え、清涼感を与える

 リアップブランドは、有効性と安全性、そして品質を追求して進化してきました。これからも毛髪用剤市場のトップブランドとして、さらなる進化をめざし、未来を変えたいと願う若者をはじめ幅広い年代の方に、ご使用頂けるような製品開発に挑戦していきます。

※1:インテージ SDI・SRIデータ (1999-2017.7)
※2:OTCとは「Over The Counter」の略で、医師の処方箋がなく薬局やドラッグストアの接客カウンター越しに売られることを意味しており、OTC医薬品=市販薬のこと。
※3:インテージ SDI・SRIデータ(1999)
※4:販売名:リアップX5プラスローション

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