抜け毛が増えると脱毛症ではないかと心配になるかと思います。しかし、抜け毛が増えたからといってそれがすべて脱毛症というわけではありません。髪の毛には新しく生えて成長し、古くなって抜けていくというヘアサイクルがあります。
そのため、正常な髪の毛も毎日抜けますし、特に季節の変化の時期には抜け毛が増えることもあります。では、どのような時に脱毛症と言うのでしょうか。脱毛症の種類、症状、原因について解説します。
<監修>
金城 里美
東京医科歯科大学卒業。
大学病院で研修医として研鑽を積んだ後、皮膚科医として、大学病院、総合病院で7年間勤務。
あらゆる皮膚疾患の治療を行う。その後、内科・皮膚科クリニックで美容皮膚科の分野にも携わる。
現在、総合病院の皮膚科で勤務。三児の母。
― 目次
― 脱毛症とはどのような状態を指すのか
脱毛症には「毛が抜けて少なくなる」脱毛症以外に「髪の毛が細く短い毛になる(軟毛化といいます)」症状の脱毛症もあります。
前者の場合、毛根から抜けるのでその部分の髪の毛がなくなって地肌が見えるようになります。円形脱毛症が代表的です。後者の場合、髪の毛の本数は変わらないのですが全体的なボリュームが減るので髪の毛が薄くなります。壮年性脱毛症(男性型脱毛症:AGA)が代表的です。
― 脱毛症の原因と種類について
成人男性の脱毛症で圧倒的に多いのはAGAです。しかし、脱毛症の種類は他にも多数あります。それぞれに原因が異なり、原因を避けることで回復できる脱毛症もあります。
種類 | 症状 | 原因 |
---|---|---|
男性型脱毛症(AGA) | 前頭部から頭頂部にかけての薄毛で始まり、徐々に進行して薄毛の範囲が広がる。日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約30%と言われております。(男性型及び女性型脱毛症診療ガイドラインより) | 男性ホルモンである「テストステロン」が「5αリダクターゼ」という酵素によって「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換され、DHTが髪の毛を「軟毛化」させるように働く。遺伝、男性ホルモンなどが関与する。 |
円形脱毛症 | 円形の脱毛斑が単発、あるいは複数できる脱毛症。発症は突然のことが多く、再発を繰り返すこともある。自然に治ることもあるが、進行して髪の毛全体が抜けてしまうこともある。神経質な人が多い。 | 毛根を自身の免疫が攻撃してしまう「自己免疫性」の病気と言われている。精神的・肉外的ストレスが引き金になることもある。 |
薬剤性脱毛症 | 原因薬剤使用後に起こる髪の毛の全体的な脱毛。 | 主な原因薬剤として抗がん剤がある。 |
漏性脱毛症 | 頭全体から脱毛するが、前頭から頭頂が特に多い | 皮脂の増加、頭皮の細菌類の増加、刺激物質の増加など |
ホルモン分泌異常による脱毛症 | 甲状腺ホルモンの分泌異常(甲状腺機能低下症、バセドウ病など)による脱毛、出産による脱毛など。 | ホルモンバランスの乱れ。ホルモンバランスが正常化すると脱毛症は回復する。 |
栄養障害による脱毛症 | ダイエット、断食、飢餓療法による脱毛。 | 栄養補給の不足により、毛を作るためのタンパクの不足。栄養状態の回復により脱毛症は回復する。 |
脱毛狂(トリコチロマニー) | 髪の毛を引っ張る癖により生じる脱毛。 | 髪の毛を引っ張るため。心因的要因。髪の毛を引っ張る癖を治すことで脱毛症が回復する。 |
― これって脱毛症かも?注意すべき点や日頃のケアについて
前項で脱毛症の種類をあげましたが、ほとんどの脱毛症は放置していると進行してしまいます。そのため、早めに気づいて早めの対策をとることが大切になります。
しかし、脱毛が少しずつ進んでいる場合、初期の変化になかなか気づかないことがありますので、ここで髪の毛の変化に早めに気づくためのチェック項目をご紹介します。2個以上の項目が当てはまる場合は脱毛症の可能性が考えられるため、早めの対策をおすすめします。不安な方は、薬剤師や医師に相談してみるのも良いでしょう。
- 抜け毛が増えた(特に洗髪、スタイリング時)。
- 髪の毛を軽く引っ張るたびに髪の毛が抜ける
- 以前と比べて、髪の毛のボリュームが減った or 髪の毛の1本1本が細くなった。
- 他の部分と比べて、髪の毛のボリュームが少ない部分がある or 髪の毛1本1本が細い部分がある(側頭部・後頭部 v.s. 前頭部・頭頂部)。
- 以前よりおでこが広くなった。
(項目にあげたように、以前の自身の写真と比較したり、正常な髪の毛の部分と比較したりすると変化が分かりやすくなります。定期的に頭皮の写真を撮ることも比較しやすい1つの方法です。)
― 脱毛症は治療できる、治療法などを紹介
脱毛症の多くは治療することで回復させることができます。
脱毛症の種類によって原因が異なります。ここではAGAの治療についてご紹介します。
① ミノキシジルの塗り薬
ミノキシジルは血管拡張作用があり、以前より高血圧の治療薬として使われていました。ミノキシジルの副作用に多毛が多く報告されたことをきっかけに塗り薬として開発を進める中で「発毛効果」が認められ、脱毛症の治療薬として用いられるようになりました。
ミノキシジルの塗り薬の発毛効果は、「頭皮の血行促進」と「髪の毛を作る毛母細胞の活性化」によるものであり、AGAのみではなく、男女含め年齢的変化による脱毛症である「壮年部脱毛症」に広く用いられています。
② フィナステリド、デュタステリドの飲み薬
フィナステリド、デュタステリドはいずれも5αリダクターゼの働きを抑えることによって「薄毛・抜け毛の進行を止める作用」があります。5αリダクターゼにはⅠ型、Ⅱ型があり、フィナステリドはⅡ型を、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方の働きを抑えます。両者の効果は、男性型及び女性型脱毛症診療ガイドラインでは同じ推奨度となっています。自費診療として病院で処方されます。個人で入手することも可能ですが、副作用のリスクや効果の確認なども考えると病院で処方してもらうことをおすすめします。
③その他:注入療法、植毛など
AGAの初期治療としては、①もしくは②による単独治療や①と②の併用治療が行われることが多いです。
― まとめ
脱毛症の種類と原因、チェック項目について解説しました。また、成人男性の脱毛症の中で圧倒的に多いAGAの治療法をご紹介しました。脱毛症は早めに気づいて早めの対策をとることが重要です。毎日の生活の中で髪の毛の変化をこまめにチェックするようにしましょう。
■参考資料
・男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
・日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版
提供元:リアップ ブランドサイト